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東京地方裁判所 平成元年(特わ)1058号 判決 1989年9月26日

本店所在地

東京都港区新橋四丁目五番一五号

株式会社日地

(右代表者代表取締役 江原秀明)

本籍

同都杉並区方南二丁目四八〇番地

住居

同都世田谷区北烏山六丁目一八番八号

会社役員

江原秀明

昭和一二年一月四日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社日地を罰金五五〇〇万円に、被告人江原秀明を懲役二年にそれぞれ処する。

被告人江原秀明に対し、この裁判確定の日から三年間、その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社日地(以下、被告会社という。)は、東京都港区新橋四丁目五番一五号に本店を置き、不動産の売買及び仲介等を目的とする資本金四〇〇万円(昭和六一年一二月一六日以前は一〇〇万円)の株式会社であり、被告人江原秀明(以下、被告人という。)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、雑収入及び有価証券売却益を除外し、架空支払手数料を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和五八年五月一日から同五九年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億五九六九万七四八円あった(別紙1修正損益計算書参照)のにかかわらず、同五九年六月三〇日、東京都港区芝五丁目八番一号所在の所轄芝税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四〇八三万五九四六円で、課税土地譲渡利益金額が二〇〇万円であり、これに対する法人税額が一四三九万四二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成元年押第七八四号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億八七五万九〇〇〇円と右申告税額との差額九四三六万四八〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)を免れ、

第二  同五九年五月一日から同六〇年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億二〇四三万二〇〇三円で(別紙3修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が六〇六二万五〇〇〇円あった(別紙4脱税額計算書参照)のにかかわらず、同六〇年七月一日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九四〇万二四一四円で、課税土地譲渡利益金額が六〇六二万五〇〇〇円であり、これに対する法人税額が九四三万一八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額五七五〇万七八〇〇円と右申告税額との差額四八〇七万六〇〇〇円(別紙4脱税額計算書参照)を免れ、

第三  同六〇年五月一日から同六一年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億七四四万九七六九円で(別紙5修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が二億三二九八万六〇〇〇円あった(別紙6脱税額計算書参照)のにかかわらず、同六一年六月三〇日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五二九六万六一八二円で、課税土地譲渡利益金額が一億八〇八二万一〇〇〇円であり、これに対する法人税額が五二二六万四四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億二九五八万八五〇〇円と右申告税額との差額七七三二万四一〇〇円(別紙6脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する平成元年五月三一日付(二通)及び同年六月二日付(四三枚綴りのもの)各供述調書

一  収税官吏作成の領置てん末書

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  支払手数料調査書

2  受取配当金調査書

3  雑収入調査書

4  有価証券売却損益調査書

5  支払謝礼金調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書二通〔(支払手数料の金額移動について)及び(支払謝礼金の金額移動について)と各題するもの〕

一  東京法務局港出張所登記官作成の登記簿謄本

判示第一、第三の事実につき

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  支払利息調査書

2  分配金調査書

3  課税土地譲渡利益金額、税額調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書〔(仕入)と題するもの〕

判示第一の事実につき

一  被告人の検察官に対する平成元年五月二九日付(一六枚綴りで「(株)日地の五九年四月期において」で始まるもの)及び同年六月一九日付各供述調書

一  押収してある法人税確定申告書(昭和五九年四月期分)一袋(平成元年押第七八四号の1)

判示第二、第三の事実につき

一  被告人の検察官に対する平成元年五月二九日付(一四枚綴りのもの)及び同年六月三日付各供述調書

一  検察事務官作成の捜査報告書〔(事業税認定損の金額について)と題するもの〕

判示第二の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書(昭和六〇年四月期分)一袋(平成元年押第七八四号の2)

判示第三の事実につき

一  被告人の検察官に対する平成元年五月二九日付(二通、一六枚綴りで「(株)日地の六一年四月期において」で始まるもの及び一三枚綴りのもの)、同年六月二日付(二五枚綴りのもの)及び同月二〇日付各供述調書

一  収税官吏作成の受取利息調査書

一  押収してある法人税確定申告書(昭和六一年四月期分)一袋(平成元年押第七八四号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示第一ないし第三の各事実につき、法人税法一六四条一項、一五九条一、二項

2  被告人

判示第一ないし第三の各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人につき、いずれも懲役刑選択

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四八条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の罪の刑に加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(求刑 被告会社につき罰金七〇〇〇万円、被告人につき懲役二年)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 中村俊夫)

別紙1

修正損益計算書

株式会社日地

自 昭和58年5月1日

至 昭和59年4月30日

<省略>

別紙2

脱税額計算書

株式会社 日地

自 昭和58年5月1日

至 昭和59年4月30日

<省略>

別紙3

修正損益計算書

株式会社日地

自 昭和59年5月1日

至 昭和60年4月30日

<省略>

別紙4

脱税額計算書

株式会社 日地

自 昭和59年5月1日

至 昭和60年4月30日

<省略>

別紙5

修正損益計算書

株式会社日地

自 昭和60年5月1日

至 昭和61年4月30日

<省略>

別紙6

脱税額計算書

株式会社 日地

自 昭和60年5月1日

至 昭和61年4月30日

<省略>

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